紙の舟で眠る【単行本版】
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紙の舟で眠る【単行本版】

八田てき

とにかく凄かった

ネタバレ
2025年7月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ まずは表紙の美しさに圧倒され、あらすじを読んで「時代設定含め、これは絶対に私好み!」だと思ってすぐに手に取った作品。
舞台は戦後の横浜。ある切実な理由で筆を折った天才脚本家・憬。そして娼館に居候し、写真館で助手をしている耀一の物語。

八田先生の画力が凄すぎる。戦後、復興めざましい華やかな街と、仄暗く妖しい赤線地帯の対比が素晴らしい。
絵柄の上品さもこの時代に良くマッチしている。憬と耀一はもちろん、登場人物みな妖艶な美しさ。思わず感嘆の溜め息が出てしまった。

ストーリーは、まるで純文学を読んでいるかのようでした。
偶然出会うことになる憬と耀一。実は子供の頃、とある事故に巻き込まれるも生き残ったのがこの二人。
普段は明るいながらも内面は虚ろな耀一、そして憬はというと、事故後からずっと“死神”の影に付き纏われている。
若くして脚本家として大成するものの、憬がモデルにした人物は次々亡くなっていく。それは死神のせい?本当にそうなのだろうか。
そんな中、憬のことを思うがゆえに耀一は姿を消してしまう。明らかになっていく死神の正体、そして、長年憬を苦しめていたその存在との決別…。
全て読み終えた後は放心状態。とにかく色んな意味で凄い作品でした。ラストはメリバかな…と覚悟もしていましたが、良い意味で裏切られた。

とにかく絵もお話も世界観も文句なしで秀逸だった作品。これは長編映画で観てみたいと強く思うほど、本当に圧巻でした。
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