ねこまた。
」のレビュー

ねこまた。

琥狗ハヤテ

5巻から涙止まらず。あとがきも毎回沁みる

ネタバレ
2025年9月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 江戸時代。おうちに憑くタイプのあやかし、ねこまた。
家を守り、生活を見守るだけで悪さはしない。むしろ役に立とうとしてくれる。触れないし見えないし、努力の甲斐なく役に立つことはないけれど、本当に居たらきっと嬉しい。

そんなねこまたが見える岡っ引きの仁兵衛と、仁兵衛に憑いた黒ねこまたのお話。基本四コマ。女性ジャンル。
読み進めると四季折々の美しさ、京の人々の生活も見えてくる。岡っ引きが同心の私的な手先だとか、副業するとか知らなかった。
ちなみに仁兵衛は手仕事としてつまみ細工をしていて、彼の作るかんざしは見事なもので女子(おなご)に人気。

作者さまの『アタリ』を先に読んでいたので、黒ねこまたと仁兵衛の日常にはほっこり(そしてアタリを読み返し、絆に号泣)。他レビュアー様の仰る通り、健気なねこまた達は最上級の癒し。色々なねこまた達がいて、本当に可愛らしい。

全6巻という巻数に怯みつつ、読み始めてみると、まるで長さを感じない。なのに長年、彼らと共に時を過ごしたような充足感が残る。
印象的な言葉が多く、「人の怒りの底には、いつも悲しみがある」今の私にはこれがチクリ。
きっとその時々で、響く言葉が違うんだろう。

そして、巻が進むと登場する朱鞘の浪人と白ねこまた。
その忠義と、ままならなさに涙する。
心優しく穏やかな仁兵衛と、同心寺島や弟子の弥七、その他の登場人物も最後まで良かった。6巻最後はほんともう…。

ほっこりするだけではなく、日常の愛おしさと寂しさ、それら全てを包む、愛のお話でした。
その愛は、作者さまから読者へのプレゼントでもあるように感じます。
疲れた心に安らぎを。矛盾と可能性からは勇気を。
ねこまた達に癒されながら、のんびり読むのがおすすめです。
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