あおに鳴く
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あおに鳴く

正解はわからなくとも

ネタバレ
2025年9月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ オススメで表示され、絵柄に惹かれて何となくクリックしたのですが…。
正面の少年が手にしている飛行帽と、後ろ姿の青年の着衣に秒で釘付け。もしやと思いページを開いたらビンゴ、海軍航空隊の飛行機乗り…!
これは読まずにはいられない。当時の飛行機乗り大好きなので、彼らが登場する物語は無条件で手に取ってしまう。初めてお目にかかった作品です、オススメよ表示してくれて本当にありがとう…。
本作はタイムスリップ物。現代の高校生・司朗と、彼が保護した記憶喪失の青年・菊(仮名)とのお話。
菊の古めかしい言動等で、まさか実際に過去から…?という思いがよぎる司朗。そんな中、菊の本当の名は鴻、さらに司朗の祖父・菊次郎とかつて懇ろな間柄だったことも明らかになっていきます。

当初期待していた鴻が飛行機乗りとして活躍する場面は皆無に等しかったけれど、ストーリー全体としては満足いくものでした。
結末に対して否定的なご意見もありますが、私はこの作品美しくて好きです。また、個人的には幸せな結末に違いないと感じました。

もしあのゴム動力飛行機(鴻の搭乗機・二式水戦がイメージされている?)が着水することにより、過去と未来を行き来できるのだとしたら…。ラストシーン、もう一度飛ばした飛行機が着水した瞬間、司朗が視線を投げた先にはきっと鴻がいてくれるはず。
「俺と生きてくれ」と、鴻がハッキリ司朗に告げている。空と海を渡る水鳥の名を持つ鴻です。過去から未来へと渡り、彼と司朗は再び出逢えているはず。

作中の司朗の子供時代の写真が、祖父と二人きりだったものから両親と三人のものに変化しています。
おそらく鴻が過去に帰り落とし前をつけたことで、彼の望み通り未来が良い方に変わった。菊次郎はしがらみから解き放たれ家族を愛すことができ、その息子もまた自分の子(司朗)を愛すことができた。
そして今度は司朗の願いを叶えるため、未来から呼ばれた鴻は満を持して彼のもとへ。───作者様が明確な答えを出されていないので、これはあくまでも私の想像(妄想)に過ぎないのだけれど…。

正解はわかりませんが、この物語はきっと幸せな結末なのではないかと。そうであって欲しいと思っています。
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