未来ではなく既にいる人たちの物語





そのためか、そのようにして生まれた子が、どんなことを考えて人生を送るのか、考えたことがなかった。この作品を読むまで。
読むきっかけは、新聞や雑誌の書評で、幾度かレズビアンカップルの子として育った作者自身の経験も反映した、クィアの人の内面を描いた作品として取り上げられていたからだ。
ーなんだ、それ。今まで読んだことない。一体、どんな内面を抱えているというのだろう?自分がのぞいたことのない視点で、この世界を見てみたい-そんな興味から、手にしてみた。
主人公の内日(うつい)は、レズビアンの母親2人に愛情深く育てられた女の子。恋愛は素晴らしいと信じ実践している両親とその友人に囲まれ、どんな形の恋愛でも歓迎される環境に身を置きながら、実は恋愛感情を持てないでいることを両親に話せずにいる。その内面には孤独が見え隠れしている。あくまでもレズビアンの母が2人いることは、日常として描かれていて、さらにその先にある繊細な感情が描かれている。
その内心に抱えた、言葉にし難い感情を対話という形で描くために登場するのが、母2人の友人でありながら恋愛話に関心を持たない多聞。タイトルにも出てくる彼女は、人に見えない存在と会話する不思議な存在。でも、その彼女の友達ー名を探している不思議な女性で、時々牛の形になるーが、ひと夏、内日のいる団地に登場し、内日と対話を重ねるようになり、内日自身も、自分の内面に抱えてきたものを言葉にしていく。
…こういった表現をすることによって、語り合う仲間の不在を補い、自分自身の在り方を受け入れていく姿を描いていくのか。誰を責めるわけでもなく、でも声を上げられないからといって見えない存在のままでは、もういられないから…と考え抜かれて選んだ描き方なのかも…と感じた。
その多聞の友人の本当の姿は、2巻で明らかになる。これも既にいたけれど、表に出てくることのできなかったクィアな人々の切実な語りが描かれていて、胸に沁みる。
先生と脚本家の吉田先生との対談で、ドラマでクィアが描かれるようになって世に出せた作品と明かされてた。やっぱり既に内日たちは存在していたのに、自分たちに見えていなかっただけなんだ。と、自分の視野が広がった感覚が、誰かに読んだことを伝えたくさせる上下巻

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