としのさ夫夫
」のレビュー

としのさ夫夫

たつもとみお

年の差、だけではない彼らの問題

ネタバレ
2025年10月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ もともとゲイではなく、甘いマスクで女性にモテるタイプの在宅ライター潤也(26)と、彼を養う、生真面目で面白味のない会社員でゲイの啓司(40)。

基本ふたりのやりとりで切り取る1日単位のお話なので、付き合う前の生育歴や詳しい過去は分からない。
年下彼氏への不安から拗れる感情と、不器用に生きる年上彼氏への愛と支配欲を、ただただ、静かに見ていく。

家でも会社でも言葉足らずで、口にする言葉には思いやりが足りない啓司。自分に自信が持てなくて、養うことだけが潤也を繋ぎ止める術だと信じている。
常に潤也を失う未来に怯え、その不安は啓司を不機嫌にする。
なぜこれ程までに自信がないのか。啓司の過去は、いったいどれだけ彼を傷つけてきたのだろう。

潤也は愛を伝えるけれども、自信のない啓司には伝わらない。ただ、そんな啓司を可愛くも思っている。
捨てられた子猫のような年上男性を自分だけが可愛がり、自分だけが愛し、自分だけが言葉ひとつで全てを管理する。
Sっ気のある静かな行為と、常に逸らさない視線。
あー、めっちゃ閉じてる。

啓司を愛し、愛で管理したいタイプの潤也。けれどまだ若いから、上手くいかない時もある。年の差に加え、啓司自身の問題点と潤也の愛し方の方向性が、絡んで爆発して、啓司が潤也と向き合うきっかけとなる。

言ってはいけないセリフを度々潤也に投げかけていた啓司だけれど、会社での啓司は、そこまで周囲から嫌われてはいないんじゃないかな。ちゃんと部下は早退させてるし、仕事は一人で抱え気味だけど、長く休んでいた社員からの申し出には、助かるって相手に伝えてる。
潤也へのモラハラ発言も、経済で支えることが唯一の方法と思ってしまっている故で、1・2話での印象は悪いものの、反省すべき点は反省し、のちに改善しようと心を改める。

5年間何してきたのよとは思いつつ、潤也以外には分かりにくくて独りよがりで、可哀想なところが可愛い啓司。そんな風に思えたのは、潤也の目を通して彼を見ているから。
潤也も面倒臭くて可哀想なところが可愛いな。そしてあの、指まわしプレイ…。分かってないの、啓司の才能では。

拗れた愛と年の差夫夫それぞれの問題がリアルで、妙に読み返したくなる作品でした。
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