忘れた春は君隣り
」のレビュー

忘れた春は君隣り

こみち

なぜ早く読まなかったのか…と思う良作

ネタバレ
2026年4月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 実は、ちるちるで長いことランキングに入っているのをみてずっと気になっていた本作。
ようやく手にして読んで見たら、社会の中の少数派として生きる痛みに共感してBLを読んでいる自分にドンピシャだったのです…

 登場するのは、クローゼットゲイとして高校で生物の教師をしている島先生(35)。賢い分、周囲との違いを悟り、心に蓋をして教師として忙しく過ごし、生徒の成長を見守る立ち位置を取ることで心の安定を図ってきたのだけれど、そこに学生時代の思い人とそっくりの生徒が入学してきたところで、物語は動き出す。
 この序盤で見える島先生の動揺ぶりから、自分の感情を悪いものとして罪悪感を刷り込まれ、いかに大きな思いを抱え込んで生きてきたのかが伝わってくる。
 そんな島先生を支えようとする暮沢先生(28)。教師としての敬愛なのか、自分でも分からないまま、かつて自分が教師になったときにかけてくれた恩義に報いようとする献身さが健気。
 この教師2人の関係を動かすのが、生徒の三ツ橋と榎本の2人。この2人が、島先生が学生だった頃には考えられなかった関係を紡いでいくのを見守ることで、島先生のかつて昇華させることができなかった思いを振り返り、2人にその気持ちを、決して軽んじるなと呼び掛けるシーンが胸を打つ。
 きっと、かつての自分がかけて欲しかったけれど、決してかけてもらえなかった言葉。
 軽んじられて、ないものとされてきた感情を押し殺した島先生だからこそ、切実さを伴ってかける言葉に泣いた。その言葉を聞いて励まされる若者を見て「苦しい時代を乗り越えてきた経験も、次の世代のために活かせる、決して無駄な経験ではない」という大きなテーマが浮かび上がり、ほかの作品と一線を画していると感じいった。
 そんな風に生徒2人の背中を押した島先生と暮沢先生の背中を、今度は生徒2人が押そうとする、という思いやりの連鎖。
 35歳だけれど、恋愛初心者の島先生がゆっくり自分の心を解放して、学生の頃の自分と邂逅するシーンも感動的で…。
 世代を超えた思いやりの連鎖の末、島先生が過去の自分を救済する姿を多彩なエピソードで描き切った作風が素晴らしい。

 描きおろしでは暮沢先生が島先生の自宅に来て…💖…島先生は処女なのか、生物教師としての知識が役立ったのか、できれば詳しく教えてほしいかも…(笑)この作者様、推します。続編希望
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