2世と器
」のレビュー

2世と器

戸ヶ谷新

何のための誰のための信仰か

ネタバレ
2026年6月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 欲しかったのは”愛情”であり”教え”ではなかったはずの小さな子供に、教えのみを与え続け空っぽの器に育て上げた大人たちとそこから決別することを選んだ2世の子。

永真の穏やかな性格には大丈夫に見えて大丈夫でないものが積み重なっていたんだろうと思えて苦しくなる。
外の世界や友人と呼べる存在の暖かさを知った時から、永真の心も身体も徐々に永真のものになっていったのかなと思う。

環境との決別のきっかけを与えた春一と彼自身のアロマンティックという感覚。
どちらも社会のマイノリティで、その中でも特に目に見えづらく理解もされにくいからこそお互いにわかり合えた部分があったのかな。
作中出てくる『トマソン』が社会にぽっかり置いてけぼりにされているような2人のメタファーにも思えて、ドキッとしました。
取り巻く環境は複雑で理解されにくいかもしれないけれど、2人のとてもシンプルで確かな関係はどんな宗教よりも拠り所になるんじゃないだろうか。

アロマンティックであっても必ずしもアセクシャルではない(その逆の人もいる)ということなどすごく勉強になる。先生の作品は読むと見える世界が広がるような気がします。
少し社会派な甘くない作品だけど、読むのが辛いという感じではなく読みやすかったです。
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