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シーモア島


投稿レビュー
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日本語版85話配信分まで読んだ感想2024年11月10日英語版で完結まで先読みしたが微妙なニュアンスが分からず日本語版で再読してる。不慣れな英語版を先読みし、そしてまた日本語版を購入させてしまう程中毒性が高い。
まず作品自体の完成度が非常に高い。絵に加えモノローグ・情景・心理描写がこれまた精緻。ドラマ仕立ての映像を観るが如く、1カット毎の流れが自然で滑らか。何よりチープなご都合主義で誤魔化さずとことん描き切る点が素晴らしい。作者は精神疾患から裏社会からアッパークラスのハイティーンからミドルエイジのリアリティライフまで、とにかく色んな方面をとても良く勉強していると思われる。BLでありながら、ウ◯ジマくんや外道の◯の世界観さえ内包している。
生まれながら富や資質・周囲の忖度に傅かれ育ったスンオンは、物質的には圧倒的な強者であるが、『母の愛』を知らずに育ち人格の中核となる愛着形成が未完了のまま生きてきた。作中では描かれてないが、自分を産んだ直後に母親が自死した事実は強烈な『別離と喪失の恐怖』を彼の無意識に植え付けたのではないかと思われる。痛みの余り感覚が麻痺して何も感じないと言うのは往往にしてよくあるが、BLというジャンルを差し引いてもこれだけリアリティある世界観にあって、ジウクに対する彼の執着は尋常でない。その様子は度々狂気のように描かれているが、それを確信したのが85話だ。寝込みのジウクを襲うスンオンは明らかに愛を失う恐れに駆られ、胎内回帰願望を彷彿とさせる言葉を口にしている。最も無防備な乳児期に母から自死を以て『捨てられた』経験が、愛の喪失への恐れとなってスンオンの無意識の根底に根付いている。ユング的解釈をするなら『愛=母』を連鎖象徴する『愛着対象=ジウク』は彼の無意識下では『己の無力さが暴露する対象』であり『捨て去られる恐怖感が発動する相手』という事なのだろう。高校時代から度々「捨てないで」「嫌いにならないで」と、その成熟した精悍な外見から及びもつかぬ幼子の様に不安な胸の内を口にするスンオンの深層意識は、『最愛の人に去られる強烈な不安』とそれに対する『回避反応』が形成されており、その反応は愛に比例して増幅される。…このように見ると心の傷がより深いのは、ジウクよりスンオンなんじゃないかと思えてならない。
作中で描かれないそうした点まで想起させるほど、この作品は非常に緻密で強烈なインパクトを放っている。 -
日本人設定の割に、中身は韓国の社会観。2024年11月3日表題通り。キャラの名前こそ日本人になってるものの、思考や発想・言動はまるで韓国人の社会観。
第一に、キャラクター性を体現するキャラの名前が悉くなってない。キャラの性質と何らマッチしていない。ヒーローの名前なんかDQNネームそのものだ。
そしてこれも韓国的社会観なのか、やたら登場人物の中に『会長』だの『理事長』だのと、世界観の小さい割に仰々しい修飾をしたがる虚栄主義が薄ら寒い。フルネーム呼び一つとっても、これは苗字のバリエーションが少ない韓国だから必要なだけで、日本でそんな呼び方は必要がない。いかにも分かりやすい成金趣味な住まいだったり装いだったり、日本人って設定を組んでるわりにこう言う描写がいかにも『ザ・韓国』そのままなのは何故なんだ。出版側の都合なのかわからないが、下手に日本人キャラに再編集する事で本来の作品の世界観が中途半端でいい加減な内容になるくらいなら、最初から韓国舞台でスタートした方が作者にとっても読者にとってもずっと良い。
そして何より腑に落ちないのが、『ヤバい世界で生き死にの凌ぎを張ってるはずのヒーローなのに、何故彼の頬はあんなにも繊細な色白ピンクをしてるのか』と言う事だ。
警戒するヒロインを妊娠させた挙句、無理矢理車に拉致るような『ヤバい世界で生きてる、好きになっちゃイケナイ危険な色気の漂う男』は、あんなに初々しい桃色の頬なんかしていないし、してちゃダメなはずなんだ。そういうビジュアルとしての瑞々しさや初々しさは、ヒロイン側の属性だ。
そして要所要所セリフの翻訳が絶妙にダサいというかおかしいというかなんか下品な所も気になった。使う言葉ひとつ・表現一つでそこから派生するキャラの造詣効果は無限に変わる。『漫画』が持つ表現性の醍醐味の一つがそれだ。
この作品は、登場キャラを読者に対してどのように魅せたいのか・印象付けたいのかがよく分からない。設定ばかりが一人歩きしてる感じで、キャラを通しての表現や描写性が追いついてない印象がある。
そういう幾つもの不自然さや作中の違和感から作品そのものに集中出来なかった点および、ストーリーとして面白いのか面白くないのか無料版ではよく分からない点、逆に言うと無料三話通して作品世界に引き込まれなかった…と言う理由から、星三つになりました。 -
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面白いけど疑問系のセリフの語尾が気になる2022年12月7日いや、話の内容は面白くてさすがままかりさんだなぁという一言。それにしてもこの漫画に限らず、最近やたら女性向けコミックスにて、キャラクターのセリフの疑問系の語尾が、か抜き言葉になってるのがめちゃくちゃ気持ち悪くて気になって仕方ない。
例えばこの作品だとこんな感じだ。
ケイスケ「夢子さんはそれでいいんです?」
↑これは夢子の意思を確認するシーンのセリフだが、いやいや、「夢子さんはそれでいいんです?」じゃなくて、「夢子さんはそれでいいんですか?」の間違いじゃね?終助詞どこ行った?
編集担当はこのおかしな日本語のネームをよく倒したなぁ。。 -
量産型ラノベタイトルの割に面白い2022年2月8日表題辛辣ですいません。
ファーストインプレッションは表題の通りの感想でした。何なら序盤多分一巻目とかもそこまで話に動きは無いし何がしたいのかもわからんが為、『絵だけが売りのつまんねー量産型漫画だ』くらいに思ってました。小説の世界への転生とか残虐な皇帝の娘とか、似たような設定を題材にした漫画が謎に量産されていてしかもまるで面白さが全くない為、この手の漫画にまるで期待値が無かったんですが、案外この作品に関しては、巻が進むごとに序盤でばら撒かれた設定やエピソードが回収されて行き、一つ一つの設定に意味付けされたストーリーが見えて来る為、読んでいて退屈がありません。そこまでストーリーにグイグイ引き込まれるほどの魅力は私は感じませんが、やたら絵だけが華美で肝心の作品内容がスッカラカンな漫画に比べたら、設定なりストーリーなり世界観なり、原作小説が別にあると言えば納得してしまう程度にはしっかりと作り込まれた作品です。 -
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地に足着いているようで、なお揺れる歳頃2014年3月16日西さんの作品は初めてですが、面白い作品ですね。
主人公二人に限らず、皆それぞれ人生の中で積み重ねてきた過去や立場や主張があり、特に恋愛に関しては勢いや情熱だけでは突っ走れない年齢に差し掛かっていて、特に人生の中でも若い時期にはとかく先を求めて疾走する傾向がありますが、徐々に道の先が読めるようになる歳頃になると、物事色々慎重になるのかも…なんて事を、30過ぎた私個人も思ってみたりしながら読みました。
また、どなたかも書かれてましたがイラストは可愛いらしくて丁寧です。人物表現や台詞一つ一つにも、ありふれたようでいてその実きめ細やかな人間味が垣間見え、人物一人一人が『立って』いると思います。
漫画を読むのは久しぶりでしたが、次巻を楽しみに待ってみます。