るろうに剣心、鬼滅の刃につづき、 この三作に共通する“魂の震える三要素”を押さえた名作を生み出してくださったことに、感謝します。
「竜送りのイサギ」は、竜を神として崇める世界を舞台に、 その神を“殺した”とされる男と、 彼を処刑した少年——そして、処刑された男の息子との物語です。
主人公のイサギは、天才的な剣技を持ちながらも、 被差別階級「透奴」として生きてきた中性的で影のある美少年。
対するチエナミは、斬首された男の息子で、 将軍家ゆかりの名家に生まれた快活な青年。
この二人のビジュアルの対比も美しいのですが、 作品の魅力はそれだけにとどまりません。
イサギは劣悪な環境の中で、 斬首という“職務”を淡々と繰り返すことで確実に心をすり減らしている。 一方、チエナミは恵まれた家柄ゆえの余裕があり、 イサギのひび割れた性質を自然に、そして軽やかに受け止めていく。
2人の間に少しずつ生まれていく信頼、 “身分の違い”がもたらす価値観・世界の見え方の差、 それでも距離を縮めていく心の機微—— その積み重ねを眺めていくこと自体が、とても幸福な読書体験です。
クシナダやスサなど、 古事記に登場する名を思わせるキャラクターたちが配置されているのも興味深い。 今後、神話や伝承との接続がどのように物語を形作っていくのか、 続きを読むのが楽しみです。