やたらやらしい深見くん【単行本版特典ペーパー付き】
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やたらやらしい深見くん【単行本版特典ペーパー付き】

松本あやか

梶ぃぃよく頑張ったねぇぇ(3巻で涙目…)

ネタバレ
2025年3月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 何から書こう。3巻になってようやくレビューする気に🌟
単話の時から爆発的に話題だった、この作品。
元々松本先生のグルメ漫画を読んでいたので「やっぱり先生の描く男子の裸体美味しそう~」と単話の表紙を見て思ったものの、攻めの梶のナルシストぶりやマッチした相手に点数をつける姿にドン引き。「むしろお前の方が40点男なんじゃね…?」という思いが抜けず、深見くんの前髪上げたら美人、という展開にもベタさを感じ、自己中男が不思議ちゃんに振り回されるラブコメ、として読んできたものの、そこまでハマれずにきました。

ところが、3巻で、時折話の中に降り挟まれていた、梶が大好きな母から、離婚するときに何も相談されずに置き去りにされて、傷浮いた思春期の男の子の心を抱えたまま生きてきた男の成長物語だったんだ、と気付かされたのです。だって、梶の回想シーンに出てくるのはいつも母親で父親は不存在。きっと梶にとって、無条件の愛情を与え一緒にいて安心できる相手は母親だったのです。なのに、梶少年がぶっきらぼうな返事をしたら、その言葉を額面通り受け止めて、母親は梶を置いて、何の相談もすることなく自宅を出て行ってしまった…梶少年、君は悪くない…でも「自分はその程度の存在だったんだ」と心の安全基地を失った梶少年が自信を失っても仕方のないインパクトのある出来事。そのため、梶は心の深いところと向き合うことなく、上から人を見ることで自分の心を守るようになってしまったのか…と、1巻での梶の印象がガラッと変わったのです。
 そして、父が病に伏せ、母も逝ってしまった深見くんも、実は元々自信のない子で、家族である妹に頼られることで、自分の存在意義を感じていたのが、妹の自立に伴い抱えた喪失感を、梶との出会いで埋めていたとは。3巻になって、相手を愛しいと思う感情が生まれたことで、実は似た者同士の2人がそれぞれ自分の気持ちの奥深いところと向き合えた場面。これらのエピソードが1巻から少しずつ散りばめられていたことを考えると、松本先生は始めから1巻での印象を裏切る展開を想定していたのだと気付かされます。
 が、そんなエモい瞬間があったかと思うと、夜のぶつかり稽古の後、相変わらず深見くんに振り回される梶が可愛くてホッコリ…この作品、タイトルに出てくるのも表紙に出てくるのも深見くんだけれど、梶という男の成長物語に思えて仕方がない(涙目)
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