このレビューはネタバレを含みます▼
圧倒的な画力と紡がれる言葉、その生き様の切実さ。
崩壊していく精神世界とその退廃の耽美。そして再生。
何もかもが芸術的で純文学的で、一度読んだだけでは頭も感情も処理が追い付かず何度も繰り返し読み返しました。
一度目はさらっと読んでいた部分を回収できたり、思わぬところで涙があふれたりして読み返すたびに新しい発見があり、上下巻で収まったとは到底思えないくらい内容が濃かったです。
「精神を蝕む恐怖を愛していた」という表現にドキッとしました。
一度憑りつかれてしまうと、それは孤独や喪失を餌にしてどんどん膨らんでしまい、そこから抜け出したいようで実は浸かっていたくなってしまうのかも・・・誰もがわりと簡単に陥りそうで怖いなと思う。
文章しかり、写真しかり、絵画、音楽、舞台、映画、もちろん漫画も他全ての分野において命を削って作品を生み出そうとする人たちは、皆どこかで精神的死と隣り合わせだと感じます。だからこそそういう生き様を見せつけられると衝撃を受け涙が出るのだと。
花の散り際や消えゆく花火など”滅び”に美を見出すのも、どこかでその”死の匂い”を感じ取っているのかもしれません。
やはり美と死は近い所にあることを改めて思います。
そして「梅は零れてこそ」・・梅の威力を知りました。
咲いている時は慎ましやかなのに”零れる”時の色っぽさは桜や牡丹以上。涙を流すようにぽろぽろと落ちるから”零れる”んだそうです。最初に表現した人天才だと思う。昔「私は桜より梅が好きなんですよ」と言った上品なイケオジを1人思い出しましたがそういう事だったのかな??なんかエロい・・・
終盤、苦しみながらも憬と燿一はお互いの存在を感じながら再生していき、もうそこに死の影はありません。まさに自分たちの力で運命を切り開いていきました。ここまできたら先生の圧倒的画力でもって美しい2人の甘~いこれからを覗いてみたくなります。いや、だってほんとに綺麗なんですもん・・この美貌でもっといちゃいちゃしてるとこ見たい。あ~妄想だけが広がっていく・・
全てにおいて圧巻でした。こんなレビュー数でいいわけがない。全世界に発信してほしい名作です。