緑の風に君をひらく
」のレビュー

緑の風に君をひらく

青井秋

作品の中を、緑の風が吹いている

ネタバレ
2025年6月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者さまの素敵な短編集を読んだ勢いで、発売後すぐに(心のこもった熱いレビューを参考に)購入しておきながら、いつまでも読めずにいたこちらも読破。

うっわ、すっご……。めちゃくちゃ絵が美しい。他のレビュアーさまも書かれていますが、素晴らしいとしか言い表せない。人物もお庭も、細部まで丁寧に描かれている。魂や命が宿ってしまいそうなほどに。
そして庭師の錦木さん。逞しい身体と精悍なお顔付きでありながら、その鼻の上には可愛らしいそばかすが。え、好き…。本来は色白なのかしら?それとも紫外線を多く浴びるから?どちらにしても、チャーミング。お仕事ぶりも細やかで優しくて丁寧。木や鳥を語るその知識、いつまででも聞いていたい。

家主で児童文学の小説家である倉岡さんは、錦木さんの話を聞くうちに彼自身にも惹かれているように見える。知りたいという気持ちは、倉岡さんにとって好ましく思うもの、というか。繊細だけれど思い切りがよくて、ミステリアスだけれど何処か可愛らしい。ちょっとしたすれ違いがあるのですが、その時の取り消したスタンプ?も可愛すぎて…。錦木さんも倉岡さんも、好きだなあ。

ふたりで話すシーンが、とにかくゆったりとしていて、すてきなんです。特に好きなのは、倉岡さんの作品を読んだ錦木さんが感想を伝えるところ。一連のやり取りとふたりの言葉が本当に良くて。素晴らしい作品を読んだ時の気持ちって、こんな感じですよね。

絵も素晴らしいけれど、言葉も素晴らしく、美しい。錦木さんと言葉を交わすうちに少しずつ変化していく倉岡さんが書き上げた灯台守と旅人の物語。それはハッピーエンドだけど切ない終わり方のものではなくて。うわー、すっごいすてき。

ふたりのやり取りがとても丁寧に描かれているので(胡桃とガラスペンとか、すてき)こわばらなくなったら、のその先も見てみたい。きっと、情熱的で美しいだろうから。
ですが、幸せなキスシーンと可愛らしい赤面で、こちらの胸もいっぱいです。とても素敵な作品でした。おすすめ。
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