こんなに笑えてときめいて切なさもあって、いろんな気持ちを味わえるBL小説は初めてです。
凪良先生はキモい攻めをこよなく愛する方で、その愛の深さがあとがきに毎回綴られていますが、私にはピンと来ず。番外編を含めシリーズ既刊4冊読んだ時点では私にとって平良はただキモいだけでした。しかし!「儘ならない彼」を読んでようやく「なんかちょっと、可愛いかも?」と思う瞬間が数回あったんです!4巻は平良という人間を、急激な成長の過程を描写しながら、彼自身の内面を深堀するような1冊でした。今回の事件を通して、平良が周りの人達からどれほど愛されているかが伝わってきて、愛に包まれた平良を見て初めて彼の輪郭がはっきり感じられた気がしました。平良のことはどうにも理解不能だったので、「キモうざ」という言葉で雑に捉えるだけにとどめていましたが、ようやく人間に見えてきたというか、少しだけ親近感が湧いたというか。これも凪良先生の巨大な「キモい攻め愛」の成せる業だと思います。巻末に収録されていた、満を持しての野口視点のお話も凄く良くて、「ほんと、平良って男は愛されてんな~」ってつくづく思いました。
人間の本質的な部分を平良と清居で別角度から見られるのもそうですが、お話の中では人間の持つ要素が多角的に表現されていて、弱さや醜さも見方を変えれば、強さであり美しさでもあるということが腑に落ちます。だからどの人物にも嫌悪感と同時に愛おしさも感じられ、読んでいる時の没入感がすごくて、何度読み返しても飽きがこない。こんな風に人間を表現できる凪良先生はすごいと思いました。
メイン2人の成長速度が速いのも読んでいて楽しいところ。お互いに理解できない部分にこそ魅力の根源があって、共に居ると自然と相乗効果で成長が加速する感じがイイ!自分を生きてるだけで高め合えるパートナーって本当に素敵だと思います。今まで読んできたBL小説の中でもベスト3に入るくらい大好きなカップル。永遠に見ていたいから、ずっと続いて欲しいです!