孤独と悲しみと寂しさを抱えた二人。
暴力によってしか自分の輪郭を確かめられないほどに心が小さく固く閉ざされています。
将輝が息をするように暴力をふるいます。躊躇いもせず言葉はおかしいけれど伸びやかに思えるほど。
その暴力によって引き寄せられる翼が、抑圧された心を抱えきれずに泣き出したくなるほど自分に対する恐怖が痛々しい。暴力よりも痛々しい。
そんな二人ですが、お互いを認識したあと穏やかに相手を観察しながら殺伐とした心の風景がだんだんと色を付け優しい手や眼差しに変わっていく様に、私までもが悲しみに囚われていたことに気づき癒されていきました。
後半の将輝が翼を抱きしめるショットで涙が溢れました。
しっかりと力強く抱きしめた腕のみのカットですが将輝の翼に対する想いが感じられて愛おしかった。
『おにくちゃん』のスピンでしたが、あの将輝が...あのシーンの続きに救済があって良かった。
スピンですが、おにくちゃんの続きと言いたい。さもないと将輝のシーンが報われないかな。
救済BLが好きです。
本作ではクズ男ですが、この作品の将輝は愛すべき男でした。
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