恋をするならひれ伏して
」のレビュー

恋をするならひれ伏して

ハルモト紺

予想の斜め上に深くて愛に溢れた物語でした

ネタバレ
2025年5月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ ハルモト先生といえば、衝撃の自称ディルドの恩返し作品(「偏愛ドラマティック・モンスター」)の印象が強すぎて、「リーマンBL…と言いつつ、どこかでギャグなりディルドなりをぶちこんでくれるのでは?」と淡い期待をして読み始めたら、そんな予想を見事に裏切る、押し殺してきた自我を愛する相手によって取り戻す、思わぬ話の深さに気付いた瞬間涙が溢れる物語だったのです。

 メーカーの営業同期の早瀬(受)と時藤(攻)は、営業部でトップを競い合う仲…なものの、一般庶民出身の早瀬目線で見れば、社長の御曹司の時藤との格差を感じる一方の日々。が、あるきっかけでお互いクローズドゲイだったことが分かり、肌を重ねるようになって時藤の自分だけに見せる表情や態度にときめきをかくせなくなる早瀬…。この早瀬が、根が真面目な頑張り屋さんで時藤に対する感情の変化が自然で、共感しやすい。そして、ハルモト先生が、余計なモノローグをつけずに、表情で物語らせるところは表情で描き切っていて、とても心地よいんです。
 そんな早瀬に対して次第に甘い表情を見せる時藤…いいぞ、もっとデレろ!デレるんだ…!と思っていると、父である社長からの依頼があると断れず、その姿をみて、一歩引いてしまう早瀬。はぁぁ、神(ハルモト先生)は、そんなに簡単に我々に甘い果実を与えてはくれぬのか、と思ったら。そこからの展開が最高なんですよ、奥さん…!

 後半、時藤視点で、何が彼を御曹司然とさせたのか、が描かれて。彼が本来の自分の性的志向も、願望も押し殺して期待される役割を果たすことが最優先になってしまった理由、自分をそのまま受け入れてくれる存在を実感することなく育った結果、募る心もとなさ。そんな彼から見た早瀬が、どれだけまぶしい存在だったのかがよく分かる。でも、早瀬が時藤を思いやる余り時藤と距離を置き、時藤もそんな早瀬の姿を見て、やっぱり自分が欲しいものは手に入らないんだ、と諦めかけたそのとき。
 まさか…と思うアイテムと、隠せなくて溢れ出る早瀬の表情、お互いの気持ちを隠し切れなくなって求めあい、素直になる2人の姿…至高の4話のラストシーン✨もう、それまでのお預けが長かった分、我々にとってのご褒美場面の甘さが最高なのです💕
 愛する早瀬により自我を取り戻した時藤と、時藤に甘やかされて素直になった早瀬の姿。最初の登場シーンとのギャップに身悶え…
いいねしたユーザ35人
レビューをシェアしよう!