彼氏が欲しかった
」のレビュー

彼氏が欲しかった

たうみまゆ

これは刺さるわ…

ネタバレ
2025年8月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ こちらの作品、四十路の性的指向が曖昧なまま結婚してしまった主人公が、ゲイバレして妻に斬りかかられるという衝撃的な場面から始まるのだけれど、古い価値観に縛られてきたなと感じる人や、周囲の視線を気にして生きてきた人に(自分だ)、痛いほど刺さる内容でした。まだ続くのだけれど、凄くこの先が気になるところで終わってます。
 あらすじにもあるように主人公が人生を生き直すことになって本当の恋とは何か、を探し求める、あったようで今までなかった物語。
 これは、ネタバレなしで読むのがおすすめ。
【と言いつつ、以下ネタバレ】
 本作は、たまたま題材がBLになっているけれども、実は時代による価値観の変化、それに抗わずに自分を大切にして生きることって大切なんだよ、というメッセージがビシバシ伝わってきて、ヒューマンドラマの風格が漂っていると感じるほど。
 長いこと同性愛者は、透明な存在とされてきたこと、結婚して一人前とされた時代を知っている身としては、主人公高井は、当時の価値観に沿って一生懸命に生きてきたんだと心から思う。
 でも。無理に周囲に合わせなくていい、と価値観が変化する中、高井が自分の気持ちに正直に向き合って人生を生き直す姿は応援したくもなるものがある。それに今の価値観を持っている高井に刺激されて、周囲の人々も変化していく描写(高井は気付いていないと思うけれど)を見るにつけ、人に流されずに自分自身の人生を生きていって、と読み手もたうみ先生に背中を押されている気持ちになるのです。

 中身は四十路ながら、本当の恋を追い求める高井の微妙な老成感に共感したり、もしも自分も並行世界で生き直すとしたら…と想像したり、と読んでいる間、痛いけれど、心が揺れ動くのを感じるフワフワした独自の読後感がクセになる。続きが本当に楽しみ✨✨
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