ジュリエットを撃て
」のレビュー

ジュリエットを撃て

桂小町

痛みと嘘まみれの世界の中での純愛

ネタバレ
2025年8月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ もう1巻で、ホストクラブの№1、ジュリエットこと朱里(じゅり)のオンの時の澄ました顔と、オフの時の№2暁と絡むときに出る頬を赤らめた素顔のギャップに撃ち抜かれて、心待ちにしていた2巻が発売されて、即買いしましたw

 2巻では、1巻で伏線とされていた朱里の太客マリィと朱里の共依存ともいえる関係が生まれた背景が描かれていて、もう読んでいて胸が痛くて痛くて仕方がなかった…けれども、その痛みを知っているからこそ、朱里は同じように痛みや闇を抱えているホストクラブに来る女性たちを金づるとみることなく、自分が見たかった夢を見せられるから、№1になったのかな、と気付かされたりして。
 桂先生が描く世界は、痛くて辛くてどうしようもない瞬間と、幸せな瞬間とのギャップが激しくて。そのギャップが激しい分、幸せな瞬間の甘美さが際立って伝わってくるように感じる。
 嘘にまみれた、感情と金が引き換えになってやりとりされる世界で生まれた№1と№2のホスト同士の純愛。2巻で明らかになったように、朱里は生まれ故郷では思春期になった頃からゲイである自分を偽って生きてきて、二丁目に来て恋人ができたと思ったら裏切られて、自分の気持ちに蓋をして生きてきた中、偶然ホストとなったけれども、そこでも本当の自分を偽って生きてきたわけで。そうするのが、居心地がよかったから。
 そんな朱里が味わってきた痛みや虚構の世界でやっと息ができるような人生に読み手が胸を痛めるからこそ、後ろ暗い過去を持たず、真っすぐに気持ちを伝える暁の愛に撃ち抜かれて、生きてきて初めていじらしくて純情な素の自分をさらけ出せるようになった朱里の笑顔に、多幸感を感じずにはいられないのです。
 それからマリィ。AV嬢である彼女の発する言葉には、辛い過去があるからこその迫力と深みが出るんだろう。共依存だった朱里が暁に丸ごと愛されて幸せに向かっていく姿をみて、彼女も自分を大切にして幸せに向かってほしい。

 この巻で第1部完結表記がされていて、きりの良いところで終わっているので、このタイミングで読むと良いかと。
 個人的に美麗な登場人物は健在ながら、案外コミカルなシーンや表情も挟まれているのが新鮮で、読みやすかった印象。
 書き下ろしは、一緒に住むようになった2人の日常生活…もう、朱里の可愛さが炸裂しているんで、是非、読んで!一緒に身悶えしましょ!!
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