明日屋商い繁盛
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明日屋商い繁盛

ARUKU

泣いてしまいました

ネタバレ
2025年10月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買いです。和テイストで、もののけ・あやかしなどが登場する物語が大好きで手に取りました。
事故で家族全員を亡くした秋緒は、遠戚から古道具屋を譲り受ける。そこには自称・唐傘お化けで男色家のキッカが居候している上、曰くありげな客や品が出入りする店だった。
しかもキッカは、秋緒の友人・天宮と瓜二つ…。

幻想的な世界観、この世ならざる者たちが数多登場するこの作品。当初は微笑ましいストーリー展開なのかと思いきや、良い意味で裏切られました。
秋緒を惑わし“向こう岸”へ連れ去ろうという悪意を持つ者、思わずゾッとしてしまうような怪異の姿。それらが、一見ユーモラスなお話の中でピリッとしたスパイスにもなっています。

もちろんそれだけではありません。自然と涙腺を刺激されてしまうような言葉や描写も、そこかしこにちりばめられています。
近頃はこんなにも“生”と“死”というものの概念を考えさせられたことはなかったかも。作品のほぼ半分以上は泣きながら読んでいた記憶が…。

そしてキッカと天宮が瓜二つだった理由、しっかりと腑に落ちました。
また作中のゲストキャラたちが、現世でもそれぞれの縁で強く結ばれていることが窺え感無量。
秋緒たちの今後も、絶対に幸せなものだと確信できる締めくくりです。

恐ろしかったり、可愛かったり、切なかったり、温かかったり。たくさんの感情が溢れ出ました。
最初から最後まで文句なしに素晴らしい物語。出逢えて良かった作品です。
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