まどいのいきもの -銀河生物観察記-
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まどいのいきもの -銀河生物観察記-

永田礼路

見過ごしてきた生き物から得る気付きの物語

ネタバレ
2026年6月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 現役医師である作者が描く作品は、どれも人間を生命体として観察して得た気付きを、ユーモアと知性が顔をのぞかせていて、どの作品も読んでいてワクワクが止まらず、そして、少し感情をひりつかせる瞬間がある。

 新作である本作は、少し不思議なSF作品。宇宙での爆発で、現代日本と似た世界に、少し変異した生命体が出現したことで、人と異なる生命体が現実社会と異なる交わり方をする。
 登場するのはヒトデ、カニ、カメムシ、エビ、ヤモリの仲間たち。彼らと人との関係が1話完結で描かれる。
 ヒトデが出てくるエピソードは、肝嚢胞(かんのうほう)があるリーマンが主人公なのだけれど、実は自分も彼と同じく肝嚢胞を肝臓に抱えているので、読んでて身につまされた。このエピソードを冒頭に持ってきたのは、仕事や出世といった人間社会内でのヒエラルキーに捉われている人間が、普段は気にもしていなかったヒトデによって、価値観の転換点がもたらされる様が描かれ、スッとこの世界観に引き込む役割を果たしているためだろうか。
 そして、カニが登場するエピソードには、身内ですら気付かなかった人が生きた意味を、思わぬ瞬間に付きつけてくる作品で、本作で一番泣かされた。思いがけず来る涙腺への刺激がさ、もう…。なぜ存在するのか分からない生命体を、全く意に介さない人、迷惑に思うヒトもいれば、そういった命に癒され、我が身をなぞらえるヒトもいる。ヒトを生産性で区別するものじゃないよ、という作者の声が聞こえてくる気のするお話。
 ほかの作品の中で笑ったのはエビが登場するエピソード。蛍光生物のメカニズムを知り、一番光ったら困るところが光ることで、人間だけが光を操り、友を集める手段としてきたのか…と、生命体と人類の歩みを考えさせる珠玉のエピソードだった。

 人間ではない命が、これまでと違う形で人間と関わるようになった世界を描く本作を読んでいるうちに、人間は地球に、他の生物に生かされている存在なのだということに思いを馳せていた。
 そんなひと時を味わえる、これまで読んだどの作品とも異なる味わいのある一冊。続きが楽しみ。
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