「この恋はオフレコで!【コミックス版】
」のレビュー

この恋はオフレコで!【コミックス版】

立河あいも

冴えない男ほど、期待値上がるのよね…

ネタバレ
2026年8月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最近、レビュー更新頻度が落ちていた。BLを読み始めたばかりの頃のような新鮮な驚きだけで言葉を連ねることが難しくなってしまったのだ。
 そんな中、この作品はなぜか繰り返し読んでしまう魅力がある。

 まず、同性愛に対する周囲の見方がオールハッピーでないのがいい。実際こういう思いを抱えて生きている人がいるだろうと登場人物に感情移入しやすい。
 この少し影のある物語の主人公は、美形で有能ながら本社から支社異動となった朝人。過去の出来事から恋愛とは距離を置き、仕事第一で生きてきた彼。支社での気の抜けた雰囲気に戸惑いながらも人生を諦めきれずにいるたたずまいが、放っておけない雰囲気を醸し出している。

 そんな朝人の前に登場するのが、課長の中谷。どう見ても冴えないメガネの中年のオジサン。でも、チラリと見せるさりげない気遣い…
 こういう出会いの場面で、冴えなければ冴えないほど、第一印象が悪ければ悪いほど、ギャップ萌え好きにとって期待値が上がってしまうというもの。期待や予想を超えた瞬間に、その人にしかない魅力がグッと見えてくると思うのよ!
 …と、興奮を抑えつつ読む進めていくと、夜の二丁目で実は名を馳せたゲイ…って、某ニンニンを彷彿とさせる設定ながら、課長の態度はずーっと抑制的。お互い同性愛者だと分かってからの朝人への態度も、急に変わるわけでもなく、でもどこか哀調を帯びていて。
 BLを読み慣れた読者なら「あっ、こうくるかも…」という予想からずれた現実味を帯びた大人の振舞いを取る課長に、朝人だけではなく、読者もトキメキを覚えてしまうよね、これは…。そんな課長の朝人を見つめる視線に、熱さを感じる瞬間もあるものの、課長の心にストッパーがかかっているのが垣間見えて、それがなんなのか朝人と一緒に気になってしまう作りが上手い。
 最後まで読んで感じたのは、これは自分は幸せになってはいけないと思っている人と、人生で恋愛を諦めていた人――そんな2人が抱えていた諦念が希望へと変わっていく過程を、見事に描いた作品なんだな、ということ。二転三転しながらも、そこに到達した瞬間、読者も多幸感を感じるから、惹きつけられて読み返すのだろうな、と思う。
 そして、「メロい」っていう言葉の意味を体感できたのも得難い経験で。これまでピンと来ていなかった言葉をこんな風に体験させてくれるBLってホントに有難い…
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