先生のストーリー構成は本当に素晴らしいです。
千波は祖母から喫茶店を受け継ぎ、店で出す飲み物はココアだけ。ある日、少し風変わりな青年・渚が訪れる。渚は店の昔のことをよく知っていて、何かを話したそうにしながらも、言いかけては口をつぐむ。
渚が訪れるたびに、二人は交流を重ね、次第にお互いを信頼するようになる。あることは相手にしか話さず、「お互いに嘘はつかない」と約束を交わす。
すでにこれ以上ないほど幸せな関係にありながらも、千波が前に進むために、そしてもしかすると自分のためにも、渚は隠してきた秘密を明かさなければならない。この関係を大切に思うからこそ、越えなければならない一線がある。
今回の展開は予想外で、家族の問題や自己認識、ジェンダーへの葛藤といった痛みが交錯しながらも、その中に秘められた繊細な感情が鮮やかに描かれている。
あとがきには、「千波は将来、渚をカフェの共同経営に誘うだろう」と書かれていて、こういうあとがきがとても好きだ。まるで二人の未来に自分も参加しているような気持ちになれるから。