青野くんに触りたいから死にたい
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青野くんに触りたいから死にたい

椎名うみ

なんて悲しい恋なんだろう

ネタバレ
2026年1月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 付き合い始めて2週間で幽霊になってしまった青野くんと、彼女だった優里ちゃんのお話。
コミカルでどこか拙い読み始めの印象からは想像できない程に、深い深い作品です。しんどくて優しくて、ピタリと心に寄り添ってくる、キレイで純粋な作品。
それでいて、怖くて恐ろしい。
ホラーと純愛。生贄と機能不全家族。暴力と負の連鎖。
彼らの全力の戦いに、ようやく幕が下りました。

もともと二人の抱えているものが本当にしんどい。
だからこそ惹かれ合い、求め合い、補い合い、救い合い、お互いを知る前は気が付かなかった種類の寂しさを埋め合う。
でもどんなに心が通いあっても、触れ合えない。
だって青野くんは、幽霊だから。

そもそもなぜ青野くんは幽霊になったのか。
青野くんの友人藤本くんと、不登校でホラー好きのクラスメイト美桜ちゃんが仲間に加わり、四ツ首様編、受肉編と物語は加速していく。

以下ネタバレが過ぎてしまうのですが…

青野くんも優里ちゃんも生い立ちが苦しく、心が酷く削られる。けれど優里ちゃんは母親のような優しさと強さで、次第に青野くんを救っていく。共に戦う藤本くんと美桜ちゃんも本当に素晴らしい子たちで、すごくすごく愛おしい。論理的で思考力が高くて、優里ちゃんたちを迎える時はいつでもオシャレをして待つ美桜ちゃん。彼女と繋がっていたからこそ戻れた場面が沢山ある。藤本くんは常に真っ直ぐで誠実で強く正しい。青野くんと友達だった彼は優しい人間だ。役に立つとか関係なく、優里ちゃんと美桜ちゃんが友達になれたのはひとつの光のように勇気を貰えるものだし、藤本くんの恋は苦く切なくて、なんて強い人だと思う。そんな彼でも優里ちゃんの家庭問題を根本的には理解できなかったシーンはグサリと刺さったし、青野くんと優里ちゃんという必然性を更に強く印象付けた。処女性を無くそうと試みた夜、ロミジュリを演じた放課後、あえて描かれない藤本くんの表情はどんなものだったんだろう。

正直、青野くんの過去は凄まじくシンドイ。全ての項で息苦しく、自己嫌悪で体調も悪くなる。でも全部が叫びで、全部が覚悟の上で、読んでる私は傷付くのと同時に救われる。最終巻は私も優里ちゃんになって、青野くんになって、物語とひとつになってドアを叩き、終わりを迎えたように思う。

全てを知ってからまた読み返し、深く静かに青野くんについて考える。何だか祈りみたいだ。
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