レビュー
今月(7月1日~7月31日)
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シーモア島


投稿レビュー
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「だから」じゃなくて「だけど」2025年7月14日極道×オメガバース×ラブストーリー。
上記、配分は5割、2割、3割くらいの感じでしょうか…絵柄は少女漫画的で艶っぽいのに、情け容赦ない汚仕事描写は青年漫画にも劣らないほどに気合が入っています(要するにエゲツない)。
しかしこれほどきれいにタイトルと整合性の取れている作品も珍しい。
(あとがきより)miso先生はオメガバースの世界を人種や性別の差異と同列に捉え、バース性を特別視しないどころかむしろ否定することにより逆に説得力を持たせるというとんでもないやり口でこの作品を生み出した模様。
バース性に限らず、生まれ持った宿命として体質や環境に影響を受けるのは仕方のないことですが、片や運命というのは、実は選べるうえにかなり流動的だったりして。
αやΩやβ「だから」とはなから諦め盲信することをいわゆる運命とするなら…
αやΩやβ「だけど」自分はどうしたいか、どうするかを考え人生を切り拓いていく姿勢をなんとする??
少なくともそこには運命の奴隷なんて存在しない。
とある秘密をネタバレしてしまうと一気に面白くなくなってしまうので泣く泣く伏せますが、嘘も矜持もごちゃ混ぜにひっくるめたマオと八坂とニシキだったから三位一体になれたのだと思います。
うなじに刻まれる番の印。月明かりを頼りに行われる彼らだけの“儀式“はなによりも美しかった。 -
平沢進とベルセルク2025年7月13日30巻くらいまでせっせと紙で集めていた、心に残る作品です。
ベルセルクといえば、アニメ映画にもなった3巻〜14巻までの黄金時代編が印象深い。音楽を担当した平沢進とのマッチングがあまりにもぴったんこすぎて、その完成度に驚愕したのはもう何年前のことか…それ以前にも、アニメ版をリアタイで見逃さんと、深夜テレビに張り付いていたあの頃が懐かしい。
ところが15巻を境に、見るからに話の筋が逸脱していき…
現世(目に見える世界)での争いごとがだんだんと幽界(目に見えない神の領域)の話へと移行して、絵柄や内容の重厚感は倍以上に増したものの、作中のグリフィス同様、作者さまの覗き見た深淵がディープ過ぎたのか、思想が崇高過ぎたのか?完全にファンタジー化してから(同時期に『ギガントマキア』というファンタジーものも手がけている)の内容に追いつけなくなったわたしは、完結を待ってから全巻買い揃えることにしたのだけれど……道半ばで逝去され、ほんとうに残念です。
別物になってしまうとはいえ、42巻より三浦先生の意志を継ぐべくバトンを受け取ったスタッフのみなさまのご尽力はものすごく伝わるので、このままラストまで見守りたいと思います。 -
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やっちまった…からの逆転勝訴2025年6月17日「 確認しなさい…単行本とダブっていないか作品詳細で確認しなさい…… 」
繰り返しこだまする守護霊の声を無視し「つたや家の番外かな?」と喜び勇んで購入したところ、まんまと内容がダブっていました…
そして「単価は安いけれど少しでも応援になれば」「つたや家をハイライトで楽しみたい時にはうってつけだなあ」などと持てる発想を駆使してポジティブに自分を慰めていたところ、そんな小細工など秒でふっ飛んでしまうような事実に気づいてしまいました…
こちらの方が修正が甘い。
茹だるような暑さの中、カッと目を見開きギラギラとウインドウを見比べる貴腐人…間違いない…単行本に収録されているものよりずっと修正が甘い、甘すぎる…!
暗めのトーンで形造られた陽物&結合部とまっしろけっけなそれとでは、やはり生々しさと臨場感が全然違います。
単行本で白海苔になっているあの下に、これだけの描き込みが隠されていたのだな…R18とまではいかないまでもR16くらいの修正度合いだと思います。
損したどころか、まさかのダブってでも買ってよかったパターンでした。 -
2010年発表の衝撃作2025年6月16日過去作『エロ忍者 桃尻忍法帳』を改題した新装版です。
吉池先生の現代版忍者シリーズが大好きで、値引きの機会に『雌伏の忍者(元タイトルは「彼と任務とセッ クスと」…そりゃ改題を迫られるよね)』と併せて即購入。男の娘ジャンルの先駆的な作品なのではないかと。
下忍のはっちょりと里の御曹司れんげ様。主従関係ということもあり、物語中盤からのロミジュリ展開が涙を誘います。
しもべの攻めはヘタレ気味で、受けは房中術のようなものを操る魔性のツンデレ男の娘。一見エチエチでコミカルな本作ですが、哀愁あってのおもしろさでもあり…絵柄とギャグでなんとかごまかされてはいても、SM、暴力、陵 辱、お稚児要素もふんだんに含まれている、なんでも許せる方向けの作品といえるかもしれません。
忍者というとかっこいいイメージが先行しますが、ぶっちゃけてしまえば暗殺集団にほかならないですからね…甘い世界ではないのだな、と暗に示されているからこそ物語に深みが増すのだと思います。
修正は白光ですが汁気は多め。
深いことを考えずエロを楽しみたくて読み始めたのに、なぜこんなにも胸が締め付けられるのか…なんとも不思議な作品なのです。 -
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エロと笑いの黄金比2025年5月14日セールだから運良く発見できた作者さまでした。
よかった、出会えて…めっちゃくちゃ面白かったです。
タイトルの『アクロマティック(無彩色)』には深い意味が込められていそうだけれど、3回くらい読めばわかるかな??
少年マンガ(ストーリー)とBL(エロ)とおとぎ話(教訓)を足してきれいに3で割ったような、ハートフルなドタバタコメディ。
過去の過ちを二度と繰り返さないよう魔族と人間界との間に隔てられた壁をいわくつきの2人の王子が元気よくエロチックにぶち壊して行く、ジェットコースターのように抑揚のあるよくできたお話でした。
絵柄もかわいらしいし世界観やセリフ回しもセンスに満ちあふれていて、物語にあっという間に巻き込まれてしまいます。こんなに建設的でユニークな魔族たちとなら、わたしもぜひ共生したい。魔王の趣味、ガーデニングですよ?平和以外の何ものでもなくないか…
人間界の王子チェルナは黒猫っぽくて魔王のブランクは大型わんこみたいなので、受け攻めのコントラストが見た目からしてもわかりやすかったし、能力的精神的にお互いを補い合っている感じもよかったです。
その能力の受け渡しがインキュバスばりに濃厚なところに、BLらしさが凝縮されているのです…ちなみに修正は白光ハレーションです…目が、目がぁ(ムスカ)…!ってなるのだけれど、それを差し引いてもチェルナはずっとエロチックでした。 -
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ヘキの宝石箱2025年4月27日拝啓、ガチムチ受けです。
東アジアの国々を闇鍋した、携帯もPCもない戦後くらいの雑多な世界観…設定はふわっと、内容はガツっと。
全身猛毒のジアと強靭な肉体に毒の効かない特異体質を持つ鋼(はがね)が一蓮托生となりそれぞれの呪縛から解放されるまでを描く、エロスてんこ盛りの痛快なラブアクション。
控えめに言ってだいすきです。主に青年&少年漫画で育ったわたしのような人間にはたまらない作品でした。
とはいえ、わいせつ物陳列罪で逮捕案件でもあるのです…なぜならあの、雄っぱいむき出しで布地少なめなとんでもない衣装で立ち回る受けの鋼くん………ノーパンなんですよ。おまけにジアにしか身体を許さない鉄の貞操、ガチムチなのに暗器までも使いこなすうえ、お口にズボズボされるだけで昇天できるドエロさときている…不自然に口角が縫われてるし敵対組織のボスにキョンシー呼ばわりされているので、試し読みの段階では一回死んでいる設定なのかと思ったのですが、そこは普通に生身でした。
鋼にしてみればジアは囚われの自分を闇の底から救い出してくれた王子様のような存在。毒体質ゆえ孤独だったジアにしてみれば鋼はこの世で触れ合える唯一の相手。究極の凹凸…それだけでも萌えるのに、アクションシーンはかっこいいし2人は終始ラブラブだし、毒のせいで鋼くんがエロエロになっちゃうご褒美エピソードまで楽しめちゃうしで最後までほんとうに飽きません。
サブキャラも魅力的で、女ボスの芙蓉がまた飄々としてかっこいい。マフィア同士の駆け引きでも一歩も引かず艶やかに威厳を放っていて、エロはエロで素晴らしいのだけれどエロを抜きにしてもおもしろい漫画だと思います。
表題にある「蓮のうてな」というのは極楽に往生した者が座る蓮台のことで、それは毒蛇の異名を持つジアとその毒をものともしない鋼が愛し合った先の極楽を表しているのかな、なんて思ったりもして…敬具。 -
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修正の魔術師2025年4月3日天涯孤独の大学生が現代から明治時代へタイムスリップする、時空を超えた恋物語。
まだ完結はしていませんが、25年秋に2巻発売も予定されているので安心してポチッとな。
メインキャラは聡明で美しく、下手に話がこじれることもなく比較的サラッと物事が進行していくため、どうしても濡れ場の方が気になってしまうんですけれども…思いがけずアンダーヘアまで拝めるなんて…!
最近の修正はキャラが脱毛でも済ませているのかというくらいの白消し発光が多いものだから、これにはわたしもうれしびっくり。修正箇所にいたっては、つや消し製法?ゲジゲジ処方??いやもうなんと表現したらいいのか…
先生の過去作を読んだことのあるお方ならご存知のように、それセーフなんですか?っていう形はっきり結合部くっきりなこの手法こそが、アタミ先生の専売特許なのですよね。
エチの構成なんかも安定的に素晴らしく、それはまるでフィギュアスケートのコンビネーションよう。まずは掴みの二回転ジャンプ(挿入あり)、華麗なステップ(オーラル)に力強いスピン(擦り合い)と読者を飽きさせず変化に富んでいるし、このまま順調にいけば2巻での三回転ジャンプ(再会エチ)、三回転半(恋人エチ)も大いに期待できそうです。
ってわたしは何を力説しているんでしょうね。 -
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寺野くんのセリフ=読者の声2025年3月25日〇〇くんと〇〇くん、というタイトルが乱立する中で唯一何度も読み返している作品です。
単純に寺崎くんと熊崎くんが両想いになるまでを描く青春ラブBLだと思っていたので、まさか続編が出るとは…しかも、内容が前作を遥かに上回る面白さとは…!
2巻……すっごいよかったです。もうエロで押し切るおつもりなのかな?と不安視するくらい毎話サービス満点な濃厚エロを挟んでいたところに、そうくるかあ……ベタといわれればそうなんだけれど、新キャラを波乱を巻き起こすためのテコ入れ要員として介入させたわけでもなく、真面目に人間関係を描いている誠実さがとてもよかった。
そもそも寺野も熊崎も好きなら好き、ヤリたいならヤリたいと正直に言える素直さはあれど妙な駆け引きでお互いを試すような幼稚さはないので、これまではストレスフリーにエロとラブコメを楽しめる癒し作品として重宝していたのだけど…2巻はちょっとだけ、いやまあまあけっこうハラハラしました。かーらーの、尊すぎる2人に爆死です。
誰に習うでもなく、相手を誤解で悲しませたくないからこそちゃんと気持ちを伝え合って、コミュニケーションをとって…
たしか婚活動画で敏腕アドバイザーが豪語していました。うまくいく秘訣は、公平に話し合いができるかどうかだって…
てらくまはそれができている。だからもう結婚してもいいと思う。 -
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砂漠の花に愛のくちづけ【電子限定描き下ろし漫画付き】【コミックス版】
萌えキュン充電BL2025年3月18日はみ出しもののインキュバスと欲望に鈍感な青年がかけがえのない関係に発展していくまでをコミカルに描く、ファンタジックなラブストーリー。
インキュバスといえばむせかえるような色気を纏った美男設定が定番だと思うのですが、この作品に登場する美男=リリンの正体はなんと、ケサランパサランみたいな毛玉なのです。お目目も独特だしモフ好きにはたまらない形状をしているのだけど、同族からは醜いと忌み嫌われておりそのため自己肯定感がどん底であるという珍しいタイプのインキュバス。それが所構わず毛玉に戻ったり泣いたり笑ったり鼻血を出したりと縦横無尽に暴れ散らかすものだから、たとえ色っぽいシチュエーションは2巻までおあずけだったとしてもそれだけでもう癒されてしまっちゃうところがあります。
受けのアシャムもリリンに負けじと可哀想なやつで、親の顔も知らずに育ち誰にも頼れない境遇だった関係上、性欲うんぬんの前にとにかく自らの欲求にとことん疎い。食べられるならなんでもいい、寝られるならどこでもいいなどと執着を見せない世捨て人のようなアシャムに拾われてしまったリリンはさあ大変。ほとんどついばむようなキスだけで1巻をまるまる過ごすこととなるのです……
そんなどこか足りない2人がお互いの望みを叶えようと西へ東へ旅をする、笑いとラブと希望に満ちたとっても素敵なお話でした。
不意なノリツッコミなどのギャグセンスも非常に素晴らしいので、その点も必見です。 -
世に出すのが早すぎた名作2025年3月18日セクピスシリーズでお馴染みの寿先生が2008年に発表された渾身の短編集。
寿先生は時代に合わせて絵柄や作風を自在に操るカメレオン作者さまという印象が強いですが、この作品は全編通して安定した作画のもと重厚なストーリーを楽しむことができます。
キリスト教の旧約聖書を参考にされたのか、人喰い天使や創世記、キリストのクローンにパラレルワールドなど穏やかではない話題が盛りだくさん。番の概念も登場するので、もしかしたらこれ、オメガバースなど特殊設定BLの礎なのではないかな…?
全三作品+コンクリートガーデン続編26Pが収録されていて、「受けが格上またはいわくつきの攻めを追いかける」構図が主軸となっています。
また寿先生の描く攻めというのが揃いも揃いナイフのように尖っていてなかなか本音を見せない曲者で、打って変わり直情的で健気な受けちゃんの行く末が気になって気になって、どんなに内容が難しかろうと最後まで追ってしまえる巧さがあるんですよね。エチとかイチャイチャ(ほぼない)を求める気持ちも引っ込むくらい、存在が存在を求める深いつながりに心を全て持っていかれます。
うちにある本は紙が焼けるほど年季が入っていますがまったく年月を感じさせない、しかも類似の見られないユニークな作品なので、ちょっとでも気になる方にはおすすめしたいです。 -
裏切り者のラブソング ep.13 & ep.15【単行本3巻収録 抜粋版】【電子限定・18禁】
本編よりも先に買った2025年3月11日少年漫画のように勢いのある、ほどよくハラハラして続きも気になるこの作品。
もちろん本編も一巻から欠かすことなく追ってはいるのですが……今回ばかりは配信後すぐにこっちを購入してしまいました。
いやすんごい。さすがに全て無修正というわけにはいきませんでしたが、熱のこもった迫力描写の前にはたまにしゃしゃり出てくる白い二本線なんてあってないようなもの。人目を盗みやっとのことで肌を重ねられる2人の貴重なおせっせを、わたくしのようなデバガメがこんなに間近で見てもいいんですか…?と背徳感すら抱くほどに局部のアップがどえらいことになっています…ジーノ、こんなに目一杯で健気にダンテを受け入れていたんですね…
これだけ心血を注いでいても出版時には対象物がほぼライトセーバーになっちゃうのだから、先生方の徒労ぶりは計り知れないものがありますね…伝わるものも伝わらなくなってしまう。
だからといってどの先生もきっと一切手を抜かずに描き込んでいらっしゃるんだろうな。映像の世界でもそうみたいなのですが、カメラに映らない細部にまで(たとえば手紙の文章や戸棚の中など)こだわり抜いて作品を創り上げるらしいので…
もったす先生はもともと比較的緩やかであるにしても、なーんにも見えなかった修正のその下をどんな形であれ拝むことができたなら、読者のわたしも喜ばしいかぎりです。 -
誰だって不完全2025年3月7日職場ではパッとしない人間が他の分野でなら人並み以上に活躍できる場合がある。
本作に登場する山本はまさにその典型で、小屋で凍死寸前だった熊飼を助けられる程度にはソロ登山のサバイバル術を心得ていた。そんな山本に助けられた熊飼は逆に仕事はできても登山となれば素人で、自分を見捨てず手厚く介抱してくれた山本に対し尊敬と???な感情を抱くところからこの物語はスタートする。
連絡が取れず一期一会で終わるかと思いきや、山本の同僚が招いたトラブルをきっかけに同じ会社の統括部から熊飼が派遣され、エリートとペーペーという形で2人はまさかの再会を果たすことに…そこからすぐさま恋に発展するかといったらそんなこともなく、劣等感を軸に話が進んでいくところが面白い。だって劣等感ですよ?なぜ先生はこんなにキュンキュンしないテーマを採用したのか…なんてことは1ミリも思わせない、もちろん恋愛や人間関係を繊細に絡めた見事なストーリー展開です。
容姿も違えば性格も真逆な2人の共通項こそ劣等感でありますが、傾向として山本は“下“を見て溜飲を下げる卑屈型で、熊飼は期待に応えようとする努力型。そんなんだから山本は熊飼に好意を膨らませつつも優越感との区別がつかず二の足を踏むことになるし、熊飼は頑張りすぎて空回りしがちに。普通ならもうそこでなんかめんどくさくなって投げ出すところを、それでも実直に相手や自分の心に向き合い続け、ありもしない完璧を求めなかった2人の結末に心から拍手を送りたい。
滑り出し、山小屋で同衾した時点でお触りくらいはあるかな?と期待したのですが、そんなエロメガネをかけて読み進めた自分をビンタしたい…
セールでもクーポンでもない定価での購入で、大大大大大満足です。 -
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名作は国境を超える2025年3月4日数年前に布教動画にて『天官賜福』を知り、日本語版が完結するまでの繋ぎとして読み始めた大人気小説。
冒険活劇との前情報からウルトラマン的な必殺技が飛び出す勧善懲悪ものだと思い込み、正直あまり期待していなかったので1巻だけを買い求めたのですが…浅はかでした。
初めこそ難解な世界観にあくせくし理解に苦しんだものですが、義城編ですっかりエンジンがかかり、気づけば全巻買い揃えて2周目に突入していましたとさ(結局3周読んだ)…
大雑把にいうと生と死と、魂や因果応報までをもひっくるめたオカルトチックな大スペクタクル。そこへ執念に象られた愛の物語までもが複雑に絡み合ってくるものだから、軽はずみな言葉では到底この作品の深さを表しきれません。
ただひとつ確実に言えるのは、普段BL小説を読まない人間が夢中で読み終えてしまうほどの面白さと切なさと、溢れんばかりの愛の詰まった作品であるということです。
読み終えた誰もがそうおっしゃるように1巻〜3巻までの恋愛模様としてはブロマンスですが、4巻で急激にBL化しますので、それを目当てに読み進めるのもアリかと。
幾重にも意図の張り巡らされた本筋のストーリーにも回収されない謎はありませんので、これから読む方はどうぞ安心してハラハラドキドキしちゃってください。 -
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本命と書いて天使と読む ※番外編追記2025年3月3日どっから出てるのかわからない変な声で笑ったの久しぶりなんですけど…
レビューランキングでたまたまこの作品を知り、試し読みの段階で超笑って…いやすっっごくおもしろかった。
しかしずいぶんおもしろいネタに着目されましたね?目新しさはもちろんのこと、人間のいろんな癖を的確に見抜いていらっしゃるところにものすごくセンスを感じます。
おじさん/おばさん構文を使いがちな年代は昭和後期(80,s)とされ、作者さまもヒメにいもたぶん該当しないような気が…?個人的に構文の半分は空回りしたやさしさでできていると思うので、そこを汲める作者さまだからこそこんなにおもしろい作品を生み出せたのかもしれませんね。
もはやヒメにいもおぢを武器にしていることだし、なーくんも語尾にハートがつくようなぬっとり感がないと(ただしハイスペイケメンに限る)この先もの足りないんじゃないかな?構文アホアホカップル編が出たら買います。
そうはいってもちゃんとラブだし修正は神だし、エチは振り切れているうえ毎回ムードもよくて最高!泡姫ごっこ中、タオル越しにうっすら見えるシルエットとチラリズムには、ヒメにいじゃなくてもやられますて…
※2025.7.14追記※
ほんとに出たーー!番外編!
いやそういうプレイできたか…あれだけ濃ゆいおじさん構文を書くような人だから、そりゃ「普通」なんて度外視で斜め上をいきますよね。それになーくんもすっかりハマっちゃって…2人が幸せならそれでいいw -
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おもしろかったです!2025年3月1日ワンダーフォーゲルというのは「自然に親しみながら心身を鍛錬し、語り合うことを目的とした青年活動」のことなんだそうですが…
まさにこの作品はしろう×ゆうちゃん、稜×イブさんの4人でワンダーフォーゲルしているような内容でした。
先人のレビューにある通り続編『センスオブワンダー』にて霧に包まれた何もかもがすっかり明らかになるのですが、リアルタイムで読んでいた方々はよくぞ後発が出るまでの数年間このモヤモヤに耐えられたよなあ…と感心してしまうほど『ワンダーフォーゲル』単体だけでは本当にわけがわからない。それでも、ひたすら伏線だけが張り巡らされるのみでエチもほぼないというのに評価が低くないのは、読ませるうまさがあるからだし何よりキャラが魅力的だしセリフ回しも面白いからなのでしょう。事実わたしもみえない友達の正体を知りたかったり、傾国顔のイブさんとどう見てもおっさんなマリさんの魅力を頼りに読み進めていたところがありますからね…
まとめますと、まず、しろう×ゆうちゃん(このカップルはキスのみ描写)の奇怪な過去から話が広がっていき、『センスオブワンダー』では稜×イブさんをメインに謎がどんどん解決→稜イブのゴタゴタと恋愛(こちらはイチャラブエチあり)に話が推移していく感じです。
そもそも医者だったゆうちゃんのおじいちゃんが催眠療法を使ったりで余計なことをしなければみんなの記憶(主観でしか覚えていない)もこんなに絡まなかったんじゃないかと思うのだけれど、話をここまで面白くし、個性も生い立ちもバラバラな4人を結びつけたファンタジスタもまた、そんなじいちゃんなのだという皮肉。 -
BLOOMS SCREAMING KISS ME KISS ME KISS ME
大好きです2025年2月24日メンヘラを描かせたら吉田先生の右に出る先生はいないのではないだろうか…いやはや、メンタルヘルスについて実に詳しくていらっしゃる。
おそらく元当事者ですよね??なぜ「元」なのかといいますと、心を患ってから昇華するまでの過程をシンプルかつ正確に、しかも論理的に描き切っている作品だからです。
あの希望に満ちたお話の終わり方…吉田作品の全てに目を通したわけではありませんが、セック スに頼らないこういった展開は稀なのではないでしょうか。
検索すれば何でも知ることができる世の中だからといって、冒頭の藍の独白なんか“わかって“いないとあそこまで踏み込んだ言葉にはできないはず…ドンピシャすぎてさすがに顔が引き攣ってしまいましたよ…
それだけならまだしも、メンヘラとピッタリ引き合うタイプの性質すらも感嘆するほど熟知されていて(メサイアコンプレックスのこと)、マコではなく先生こそが出家してもう俗世にはいらっしゃらないんじゃないかと邪推してしまうほど浮世離れした内容となっています。※普通にSNS発信されているので俗世にはいらっしゃいます
本作品…和製哲学や仏教、心理学や精神世界に多少なりとでも興味のある方にはブッ刺さって抜けないくらいの破壊力があります。とっかかりさえ掴めれば絵柄のクセはなんとでもなりますので、共依存のメカニズムやそこから脱する方法をリアルに知りたい方はとくに、教科書代わりに購入することをお勧めします。
わたし自身、患っていた20年前に出会いたかったーとたられば思わなくもないですが、病んでいる最中に読んでも良さがわからなかったかもしれません… -
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異次元の怪作2025年2月18日信じられますか…これがBLだなんて。
手加減やデフォルメなどは一切されていない、ゾンビにまつわるオムニバス(なんだけど全部つながってる)。先生のたしかな力量に裏打ちされた生々しいゾンBLに、なぜこんなにも強く惹かれるのか。
まずは郊外にポツンと佇む深夜のダイナーに店主がひとり、奇妙な客の話を聞くところで物語は幕を開ける。1話目のアメリカナイズな話の運び方からは若干80年代ホラー映画臭が漂うが、ゾンビをテーマにしている時点でそりゃ明るいお話ではないよね。
掘り下げると無限に深いのに、一見するとセッ クス&バイオレンス&ストックホルム症候群。道徳倫理公序良俗なんて野暮なことは言いなさんな、周りを見渡せば血で血を洗うゾンビワールドが広がっていて、誰も彼もがいつ噛みつかれ変異するかわからない極限状態なのだから…
ちなみにヤンチャな感じの表紙の人物は、2話に登場するライナス&コナー。この2人のエピソードも狂おしいほどに切なかった…死にゆくコナーを愛するライナスにとってゾンビ化は願ってもない魔法のようなもので、死肉をすすりながらも幸せそうに暮らす本人たちを見ていると、なにが正解かわからなくなってくる…そういったモヤモヤを富田先生はキャラを通じ「善悪の彼岸(byニーチェ)」と表現していた。善も悪も超えたカオスの中で、拠り所もなしに自律できる自信がない…個人的に気になるのは1、2話に登場するアダムの心情。初登場時ウィリアムに相棒の面影を重ねていたけれど、それは恨んでいるからなのか、未練タラタラだからなのか…
巻末、愛おしげに掲載されている没ネタを使っての続編はなかなか難しいだろうな…すんごく面白そうなネタばかりなので、採算度外視(失礼)で出版してくれたりしないかな。
※他の方のレビューで知ったコンテスト受賞作「うつくしいものたち(無料公開)」も拝読しました。すでに異彩を放っている… -
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ラバーからラバーズへ2025年2月15日ヤリ友から恋人になるまでを描いた前作も相当よかったけれど、今作はさらに踏み込んだ濃い内容に仕上がっていてもう最高でした…!
身体に遅れて伴ってきた心の距離が追いつかず、家族との関係や将来に戸惑いながらも真剣に向き合う2人が尊くてしんどい。いちいち周りに自分の説明をしなければならないほどすべてにおいてマイノリティ(だから人付き合いがめんどくさくて情緒の発達が遅れた)な長峰とノンケでおおらかな諏訪は基本的に価値観が合わなそうだけれど、だからこそ視野が広がるし貴重であることに気付いた途端の、あの激しい物理的精神的な距離の詰め方……圧巻です。
時間は寿命だから、あれだけお互いに時間と労力をかけられる時点ですでに2人は立派なラバーズなんですが…それを自覚するのはおそらく10年後(一巻参照)。次第にやわらかくなっていく態度の端々にその片鱗がチラ見えしています。
これで終わるのは寂しい…でも、作者さまも描きたいエピソードがあるらしくいつかお届けしてくださるそうなので…完結は先のようだし(そうですよね??)、もうしばらくエチエチモダモダを楽しめそうでうれしいです。 -
「二度目の朝は君に1曲」番外編『Don’t stop me now』【電子限定版】
チョコよりも甘い2人の一夜2025年2月14日バレンタインネタを当日に配信してくださるなんて粋すぎる!
ノーマークだったうれしい番外編。新藤先生のエロなんだからどうせ最高だろうとわかっていましたが、最高を超え、言葉が天の彼方に突き抜けてゆきました…
『二度目の朝…』でも超絶どエロかったのけぞり悠様が今回も大変なことになっています…内容はお値段以上、カカオ10%並の甘さで大・満・足。
ど迫力ソロプレイに、出張帰りからの甘々恋人エチに…スパダリSっ気満載で悠を追い立てる朝倉と、快感のあまり汁をまき散らしながらブリッジしてしまう敏感な悠様をバレンタイン当日に拝むことができ、ワイはしあわせ者です。
それにタイトルの名曲「 Don't stop me now(Queenかな?)」が作品のいろんなところに生かされていて、そういう観点から読んでも面白い。
アップテンポな曲調からは精力旺盛な朝倉を連想できるし、「♪今夜は1人で思いっきり楽しむんだ」という和訳なんかは悠がソロプレイを楽しむイメージと重なっていちいちニヤける…「♪たまらなくしあわせ」「♪今は俺を止めないでくれ、そうさいい時間を過ごそう」といういかにもな歌詞を裏切らないノンストップぶりでした…もともとは飲料のCMのさわやかなイメージでしたが、これを機にわたしの中で恋人たちが精力的にハッスルする曲へと変貌しました。
シゴデキな2人の濃厚な一夜。チョコを食べすぎなくても鼻血が出そうなほどに甘いです。 -
たまにさちおと空目しそうになる2025年2月8日内容は『いん魔じゃないのに!』『悪魔のくせして!』『君にたくさん食わせたい』の豪華三本立て。
『君にたくさん…』は初期作品っぽい初々しさが。悪魔シリーズはごちそうΩの前身かな?と思えるほどテイストや設定が近く、読んでいてすごく楽しかったです。
タイトル通りいん魔じゃないのに求められるがままつやごとを頑張っちゃう天然なべるちゃんがかわいい。契約者である草介がまあまあどクズなものだから、予想外にハードなプレイを強要されキツいはずのべるちゃんなのに…
脳内に「?」を浮かべながらも一生懸命お願いを受け入れる底なしの健気さに、草介だけじゃなくわたしもぐずぐずに絆されました。
後半はべる兄とホンマもんのいん魔の物語。意外なのは男気あふれる育ての兄の方までもが受けだったこと。兄弟揃って健気かい。
そして、衝撃の描き下ろしですよ…この最後の短いお話だけで、悪魔シリーズの点と線がぜーんぶつながります。
はなさわ先生はぽやっとした愛されキャラを描くのとお話を丸く収めるのが特にお上手な印象。
個人的には既刊すべて安心して購入できます。 -
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掃き溜めに愛2024年12月29日美しきMIYAの後家さんのような色気にあてられて、『赤くて』『青くて』『ウルフ』を一気読み。姫としてクラブボルゾイに貢献した気分です。
訳ありは訳ありでも正反対な動機でホストになったミヤとタマ。属性でいうなら陰キャと陽キャ、磁力でいうならN極とS極。いくら理屈がうるさかろうと、対極同士は必然のように惹かれあいついにはお互いから目を逸らせなくなっていく。その過程が素晴らしく人間臭くてわたしの心を掴んで離してくれず、もう何日も2人のことを考えてしまっています……
施設出身のミヤは不幸がデフォルトみたいなところがあるので、邑の与える取引関係のままでは廃人まっしぐらだったと思う。ギブアンドテイクではなく何の見返りもなしにギブギブギブしてくれる愛じゃなきゃ納得できないし安心もできないミヤの心を余裕でかっさらっていくタマが男前すぎる。
しかし夜の世界はなんというネガティヴの吹き溜まりなのでしょう…キャストは肉弾戦だわ客はメンヘルわで文字通り命懸けで生き急いでいて、永続性の見込めなさに切なくなりました。
騙し騙され絆され散財…ここまで掘り下げてくださった先生に敬意を表したい。 -
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エロがっぱ、肩透かしを喰う2024年12月20日ひと目見た時から表紙の艶かしいお兄さんが忘れられずカートにイン。試し読みを覗けば、すぐにでもおっ始まりそうな恋人との甘いやりとり…
「ダーリン♪」
いかにもいいひとそうな幼馴染をダーリン呼びしてしなだれかかるこのマッチョなお兄さんが受けだとでもいうの…??
はわはわしながら作品を購入。続きを読めばめくるめく恋人エッチがすぐさま開幕し、予想以上に鼻血ブーな肉感描写のオンパレード。
修正が甘いおかげで接合部までも堪能することができ、エロがっぱは大変満足したのでありますが…
ド迫力のエチは最初に2回だけ。中盤から後半はどれだけお互いを大切に想っているか、精神的なつながりに重点が置かれていました…
こちとら身体を使って愛を確かめ合うエロエロバカップルのお話だと思い込んでいたので、まさか純粋な愛情に涙するとは想像もしていませんでした。
この作品は肉欲にただれたヤリモクカップルのお話ではありません。
心からお互いのことを想っている、純愛ものです。 -
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クスッと笑える鳥BL2024年12月6日わたしはこの作品好きです。
絵もきれいだしエチにも愛があってすごくバランスがいいと思います。
表題作『鳩』のほかには、『雀』『鴉』とほんわかした鳥の恩返しが続きます。
ルッキズムやスペックで相手を判断しがちな人間とは違い、いかに自分たち動物に親切か、心優しいかというところに惚れポイントがあるらしいところもよく考えられている。
鳩のノアは無駄に威厳があって笑えるし、雀のすず(唯一の受け)は感情豊かでとてもかわいく、鴉のクロオは愛嬌がよろしくて懐に入るのがお上手。それぞれの習性や人間と暮らす上での問題点を考慮したやさしいBLでほっこりしました。
ほっこりもするのですが、さすが本能に忠実な生物だけあってやることはサクッとやります。
人間のようにモダモダとまわりくどくなく「え?想いが通じ合ったのなら交尾だろ?」くらい身も蓋もないので、そこに物足りなさを感じる方もいるかも。
河合先生、人外専門のmarginalさん。
素敵な作品をありがとうございます。