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今月(4月1日~4月30日)
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シーモア島


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最強にクール&ホットな心霊バディ/群像劇2021年3月14日除霊師の冷川と、霊が視える助手の三角が共同で霊を退治する際、気持ちよさを伴う互いの「魂の触れ合い」が生じる。心霊系のアドバイスも行う「観察力」のある占い師の迎や、霊を信じない刑事半澤なども登場。この世のあちら側とこちら側のあわいで「信じてることを本当にする力」をめぐる物語。熱い。
そして、心霊を介したやりとりとBL(的な愛)を掛け合わせて様々な関係を深く描く群像劇でもある。霊視者と除霊者、母と子、夫婦、父と子、刑事と事件の被保護者、宗教団体の先生と信者、死霊遣いの女子高生とその従者(元ヤクザ)の関係など……。絶妙にリアル。なんてクールな漫画なんだ!
つまり最強にクール&ホットな作品です。必読!いいね
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神作品、夫婦におけるリバの可能性の探求?2020年12月20日セッ クスレスになった夫婦に妻の元彼が介入してくる。ぎりぎりありそうな展開に、私はこんな作品を待っていた!と心の中でガッツポーズを決めました。夫の敦のセッ クスに対する抑圧、解放されなさはやや類型的に描かれているように思います。コメディではありますがどちらかと言えばエロではなく、非常にまじめな性をめぐる思いが交錯する切ないお話に読めました。夫婦におけるBLでいうところのリバの可能性が探求されている?性の対等を考えるにあたり素晴らしい作品。もっと言えば、「BL展開」は妻の元彼 加持×夫 敦ではなく、妻 優×敦の間でこそより起こってほしいような(現在、2巻が刊行)。
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幸せな家族のかたち、愛に溢れたカップル2020年12月20日akabeko先生の作品の中で、『蝶と花の関係性』を抜いて『タケトコタトアオト』が現時点で一番好きな作品になりました。嫁に逃げられた元ヤン・タケトとその小さい息子コタ(タケル)、そして保育士のアオトとタケトの母(ババァ様)という幸せな家族のかたちにほぼ最初から最後まで涙が止まらず。先生の作品は物語の閉じ方がきれいすぎるように感じる部分がありますが(『四人のにびいろ』など)、この作品ではそのフィクション性を希望として受け取りたいと強く思います。アオトとタケトの愛に溢れた関係も泣けてきます。akabeko先生が描く、ブルーカラー系の受けのかわいさが健在です。そして私にとっては、新しい作品なのにどこか懐かしい雰囲気を感じて癒される、先生の作品が大好きです。
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生活と感情、想起とポエジー2020年10月31日翻訳家でまじめ男の峰とバス運転手で彼女持ちの安城が急に仲良くなり、半同棲関係になるまでの8か月の出来事が、日記形式でシャッフルして描かれています。エピソードの長さはまちまち。コンソメとかえりあしとかオレガノ、メシの準備……日常の風景が並置され、リズムを作り出しています。リニアな時間から開放されたエピソードが空間的にモンタージュ、配置されることでその隙間に余白が想像され、詩情が漂います。生活とともにある感情の動きをくっきりと写しとる表現が見事としか言いようがない。
この行ったり来たりの想起の視点が入るとなぜ泣けてきてしまうのだろう。『恋の話がしたい』(2008)でも「おまえ喫茶店で絶対カフェオレ」のところでホロリとしてしまう。
余談ですが、著者がポケットマネーで作ったという『さんかく窓の外側は夜』グッズのいかにもなダサ・クリアファイルがイカス! -
希望に満ちたBLのニューウェイヴ2020年10月31日虫歯先生についてレビューしないわけにはいきますまい。たなと先生が虫歯先生のファンだと知ったのをきっかけに『不死身の命日』を読んだのが最初でした。アートスペースと雑貨屋経営、インディーズCDレーベルのプロデュース業をするユタカが、その傍ら行う出張ホストで出会った強面のツカサは、実は見習い中のサキュバス。そのツカサをプロデュースすることをユタカが持ちかけて……という荒唐無稽な展開やサキュバスという設定から繰り出される心憎い演出や小道具(?)の数々が、ずっと地上から浮いているような浮遊感をともなって浴びせられ続けます。この軽さ。と萌えの両立が絶妙なバランスを生んでいます。『ちるちる』サイトにも書かれていますが、3Dを撮影したこだわりの表紙といい、本文中にいらすとやのフリー素材を放り込むなどセンスに溢れたレジェンド的1冊。
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呪呪呪━━センスの塊・純度高い原液マンガ2020年10月29日一度見たら忘れられない表紙を描く西田ヒガシ(旧:西田東)先生ですが、この作品も然り(願い叶えたまえ、見つめていたい、やさしいあなた…口絵に次ぐマイランキング上位に食い込みました)。可愛い恋が書けなくなった小説家に取り憑いたオバケ、そのオバケが見える配達員が織りなすお話。西田作品の笑いのセンスと純愛な感じの落差や、展開の圧縮度、ライフとラブのあいだにある男同士の交感の在り様に圧倒されてきましたが、2話目にしてすでにその独特の空気感に浸れます。取り憑いた人間に気づかれないポルターガイストとか最高か。純度の高い原液のようなマンガをありがとうございます。
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クリティカルヒットな作品2020年10月18日いままで出会ったことのないような作品に衝撃を受け、すっかり魅了されてしまいました。一見無骨で乾いた絵柄とユーモア。けれども、二人の男のピアノを介した関係はこの上なく優しくロマンチックでもあり。ヤクザの男、深見のセクシュアリティへの意識も含めた生き方を大きく揺り動かす物語でもあります。そして圧縮された展開(にもかかわらず3巻もある)をさらにドライブさせるアクション表現が光ります。
クリティカルヒットと言ったのは、この作品の威力を表すのに、致命的な一撃であるとともに、批評的なという意味も込めたいからです。BLへの批評にもなっているのでは?と思える稀有な作風。絵柄(最高)も含めてどこか覚めているようで、また、深見の自己破壊的な傾向からヒリヒリした描写も多いですが、限りなく切なく優しい。その落差にグッときます。なんて高級なんだ。
よしながふみ×三浦しをん対談(『あのひととここだけのおしゃべり』(2007)収録)で知った作品ですが、西田東(西田ヒガシ)先生には熱烈なファンが多いというのも頷けます。『青春の病は』に脇役工藤の短編「天国が見える」前・後編が収録。 -
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読むリゾート、予兆が醸すエロス2020年8月13日作者がインタビューで語っているように、これは読む「リゾート」。南国の小島にある娼館が舞台。男娼たちの心身のケアをする擬似愛人役の一人、アポロと男娼フィーは娼館のルール上、恋をしてはいけない。離婚調停中で娼館にきたばかりのアポロ。奔放だが複雑な過去があるフィーはその教育係になる。二人の距離が縮まるか縮まらないかの予兆、気配だけがある全編にエロスが醸成される(現在、単行本1巻が刊行)。過程に尋常ではない官能が宿る。オーナーの美学により、男娼たちの地位が保障されていて、性を謳歌しているのもポイント。
BLアワード2020のBESTコミックで3位。座裏屋蘭丸先生の完成された世界観の作品を前に、BLというエンターテインメントの奥深さに唸るしかない。 -
個別の生を肯定する思想に凄みすら感じる2020年8月12日SHOOWA先生のセンスが極まっている“人外BLファンタジー”。ある種の理想郷ニィーニの森が舞台の3つの物語+番外編。かわいい、笑える、ロマンチック。多様な(つまり個別の)生を肯定する思想に凄みすら感じる。onBLUE comicsの層の厚さよ。BLアワード2015のベスト異色1位。デザイナー川名潤氏による、この装丁についての貴重なコメント:www.instagram****/p/BxoobXtDqE6(instagramの後はドットコム)。
このような作品が世に生み出されてあることに勇気づけられる。この作品のような少しのシリアスさもまったくない、ぶっとんでる短編・裏筋太郎秘話「愛と現実の狭間に」(『新装版NON Tea Room』所収)なども大好きです!! -
スピリチュアルとBLの交差点2020年8月12日動物の声が聞こえるという、二人だけに特別な共通点を通じて近づいていく振一郎と成澤。スピ的な目に見えないものを感じる能力を共有する設定として、ヤマシタトモコ先生『さんかく窓の外側は夜』(2014-)を思い起こした(この作品ではコンビそれぞれの能力が異なるため、除霊の際、共同作業が発生し、気持ちよさを伴う互いの「魂の触れ合い」が生じる)。中学生の振一郎と大学助教授の成澤の心が通い合い、セクシュアルなこと抜きにひっついてベタベタしている時期(2巻あたり)の名づけられない親密な関係(高河ゆん先生的な?)が、もはやもっともエロいのではないか?と思えてくる。
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激シブな衝撃作。“友情以上のモノ”。2020年7月10日奇跡のタッグに言うことなし。最の高。激シブ。超クール。単行本2巻を読み終え、正座待機あるのみ。金田淳子さんの連載「フェミニスト両手ぶらり旅」を見て読んだ。コミックナタリーでのカチCOMIレーベル誕生1周年記念のSHOOWA先生と雲田はるこ先生との対談で、雲田先生が言うとおり「男子の身体がそのままBLっぽくはないヤンキーマンガの文法で描かれている」。
作画の奥嶋ひろまさ先生はBLについて「友情が描きたくて不良漫画を描いてた僕は、友情以上のモノを描けるって最高じゃん、自分が描きたいものはこれじゃないか?と思えました。」と質問箱に回答していた。ネームはSHOOWA先生ですが、友情とそれ以上のモノはこの作品にもあるように思う。そのあわいに尊みがマックス。
赤松が自らゲイをネタにしたようなギャグが爽快でいいな! 裏社会のシリアスさも濃くなっていますが。胸が痛すぎるヤンキーBL。ありがとうございます。 -
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