「ポルノグラファー」シリーズ2作目、木島と城戸が再会してからポルノ作家が誕生するまでの過去編です。
「ポルノグラファー」本編から遡り、木島と城戸がある意味特別な関係になるまでのお話。友人であり、作家と担当編集者であり、初めての男となる軌跡がじっくりと生々しく描かれています。
「ポルノグラファー」では、木島のハチャメチャで陰気ないやらしさが際立っていましたが、このお話を読むと、そんな木島を作り上げた一端に城戸が大きく関わっていたことがよく分かります。確かに作家らしい変わり者で飄々とした気難しい一面は元々あったものの、艶めかしいエロさや本音を嘘で固めて誤魔化すようなズルさを覚えたのは間違いなく城戸との関係からです。まともでありたい城戸のまともでない部分によって木島の変態性は目覚めさせられ、それを受け入れていくのは木島にとっての一種の愛ではないかと思いました。城戸には木島を受け止める度量がなかったために二人のただれた関係は終わりを告げますが、木島にとって特別に影響を与えた人物であるのは間違いないと思います。
そして、もう一人木島にとっての特別な人物が蒲生田先生。父親に死ぬまで自分という人間を受け入れてもらえなかった木島にとって、蒲生田先生は一種の父親代わり。木島のファザコン的欲求と蒲生田先生の家族愛的欲求が互いにマッチし、お互いの望みを叶えられた最期だったと思いました。城戸の下心が生んだとんでもない発想が、二人の人生に大きく影響を与えるなんて、出会いという偶然の産物が起こした奇跡だと思います。
「ポルノグラファー」では、木島という人間が全く理解出来ませんでしたが、彼の過去の濃密さを知り、また見方が変わるような気がします。