陽だまりのような暖かさ、木漏れ日のような柔らかさを感じる素敵なお話でした。主人公の颯太は、キツめのルックスとそれに見合った歯に衣着せぬ物言いで人と接してしまい、周りに疎まれがちな大学生。そんな颯太が縁あって出会った春之輔というのが、颯太とはまた別の方向性の難ありな人で…要するにタイプは違えどコミュ障同士という設定。
そんな二人だから当然すったもんだの出来事がありつつ、それぞれの人生の課題みたいなものを意識して改善していく様子や、心と体の距離を縮めていく過程を微笑ましく読みました。
読む前はタイトルの『ハルドナリ』って何だろう?どんな意味があるんだろう?と思いつつ大して気にしてませんでした。読んだ後も「ハル」は「春之輔」のことかな。春之輔の隣って意味だろうな…くらいにしか思っていなかったんですが、何か素通りできない勘みたいなものが働きまして調べてみました。そしたら何とも深いい意味があって驚きました。「春隣は、冬も終わりに近づき、春の気配がどことなく漂う様子をあらわす冬の季語」なんだそうで、意味を知ると改めて素敵なタイトルだなと思いました。
物語全体で人生の春だとか恋の季節だとか、もちろん春之輔も含めて色々な春を表現しているようなストーリーでした。
こちらの作品で、先生の単行本になっているものはコンプリートしてしまったので、これからは新刊を楽しみに待ちたいと思います。