アポロ11号が月に降り立つ前年に連載開始、そして連載終了後間もなくアポロ11号が月に降り立ったという、なんだか特別な時期に描かれた子供向けSF作品。憧れの夢ある「近未来」として描かれたこの作品、舞台は2023年なんですね。既に過去になってしまったレトロフューチャー、明るく楽しく、オンボロホテルの跡継ぎ問題と宇宙人達との異文化交流。そして宇宙旅行のロマン。
前半は「つづれ屋」メイン、後半は宇宙旅行メインになっています。
お話自体ももちろん楽しいんですが、実は私がこの作品で気に入っているのは、21世紀を「近未来」として描くために、藤子・F・不二雄が考えた設定です。「SF」の「F」を、「フシギ」でも「ファンタジー」でもない「フィクション」寄りに位置付ける設定だと思っていて、藤子・F・不二雄らしさを感じさせられます。
作品中にはあまり表立って出てきてはいませんが、こちらの本に「特別資料」として収録されている、「地球連邦の歴史」年表。作品が描かれた1968年から50年程度では、宇宙人達が行き交うほどの科学的発展は無理、そこをただの「夢物語」として終わらせない設定が、「宇宙人による外圧」です。圧倒的に進んだ科学力を背景に、地球上の争いを無くし、反乱分子は鎮圧し、都市を改造しているんですね。
この設定があるからこそ出来た話『あやしい客』(前後編)は、全4巻のてんとう虫コミックス版には収録されていません。
平和と圧倒的な力との関係に、いささか複雑な気持ちになるこの設定と『あやしい客』という話……大人になった今こそ味わってみませんか。